EDIT
表参道駅から徒歩数分、青山通りと昨年長い歴史に終止符を打ったホテルフロラシオンの間の路地には、小ぶりで雰囲気の良いショップやサロンが点在している。周辺には有名建築家設計の建物も点在しており、周囲を見回しながら散策するのが楽しいエリア。青山通りのロードサイドは中規模ビルの開発が進んでいるので、今後開発が進むであろうフロラシオン跡地への新たなアプローチは整備され、大通りからも歩行者が流れてくる事が期待される。そんな人の流れが交わるあたり、周辺に溶け込むように品の良い戸建ての建物が佇んでいた。
前回は美容サロンとして使われていたこの建物。エントランスはやや階段を上がった中二階になり、前面に対してオープンでありつつも、視線が直接合わないように工夫されている。誰でも気軽に出入りできるわけではないが、興味があれば覗くことができるような距離感。1階はゆったりとしたアプローチを活かした小規模なイベントスペースや、住居のような雰囲気を活かしてキッチンスタジオにするなど、特定の目的を持った来客を迎える際に、特別感を演出できるのではないだろうか。
2階と3階はオフィススペースや面談ができるミーティングルームとして、最上階の3階にはしっかり使えそうな広めのバルコニーがあり、工夫次第で用途や機能を使い分けられる。
内装は前回のテナントの意匠や造作が一部残っており、やや可愛らしい印象。スケルトンでの引き渡しも可能だが、それでも天井はそれほど高くない。新築当時は住居仕様だったためか、全体として居心地の良さが魅力として備わっている。
居心地の良さは、そこでのコミュニケーションの距離に関わってくるのではないだろうか。外部とは程よくつながり、ゲストには心地よく過ごしてもらう。スタッフひとりひとりの自邸へ招待するような、そんなストーリーのある出会いができる場になれば素敵だと思う。
EDITOR’S EYE
地下には以前は飲食店があったようだが、天井が2,100mm程度で低めのため駐車場や倉庫での利用になるだろうか。居室扱いになるようなので、シアタールームや荒っぽく使える作業スペースなどとしてうまく工夫して使っていただきたい。