EDIT
山手通りに並行して流れる目黒川沿いは、小規模ながら個性的なショップやカフェが軒を連ね、季節ごとに多彩な表情をみせる魅力的なエリアだ。中目黒駅より徒歩2分。川沿いに建つこのレトロなマンションは、この地をよく訪れる人には馴染みのある建物かと思う。そんな建物の最上階にある角部屋は、少々荒っぽいがセルフリノベーションされ、なかなか個性的な空間へと生まれ変わっていた。
緑色のレトロなスチール扉を開けると、無骨に仕上げられたワイルドな空間が現れる。グレーのペンキで整えつつも、味わいのある型枠の表情を残したコンクリートの壁や天井。工場を思わせるような鉄板柄の長尺シートの床や、壁から突き出す大きな換気ダクトのなごり。こちらは自然換気口として残されているようだ。天井も古いマンションには珍しく、約3Mとだいぶ高い。また、角部屋という事もあり、一面は川沿いに開け、もう一面は隣のマンションの屋上越しに遠くの風景を見渡せる。数字上では少々コンパクトに感じるが、これらの要素が空間に広がりを与え、圧迫感もなく気持ちよく働ける部屋だ。日中は日当りも良好で、窓際に植物でも置いたらスクスク育つだろう。バルコニーからは、春には桜色に染まり、冬にはイルミネーションが煌めくロマンチックな目黒川の風景が広がる。そんな特等席が付いてくるのも、この部屋で働く1つの大きな特典だ。
‘’工房’’という言葉にワクワクするのは私だけだろうか。この部屋はまさにその言葉がピッタリな、少し作業臭い空間だ。例えば工房にあるような重厚で大きめな木製テーブルを、中央に配置してみる。さらに椅子はレトロな木製チェアーで揃え、業種によって出てくる特殊な作業ツールなどをディスプレイのように壁に掛ければ、より雰囲気を演出出来るだろう。通常の作業はデスクで行い、ブレストや打ち合わせなど、クリエイティブな作業はこのテーブルで行う。必ずしも快適とはいえないかもしれないが、通常のオフィス環境では創造もしなかったようなアイディアが生まれそうである。
EDITOR’S EYE
オシャレと言うよりかは個性的な、どこか中目黒らしいと言える空間だ。
素材の使い方や壁の表情、2カ所謎に残されたダクトなど、ざっくりとした仕上げで面白い。さらに701という大きく書かれた部屋番号も、マンションのなごりを残した愛らしい装飾の一つだ。空間や眺望など、パフォーマンスの高い物件と感じる。